初心者がゼロから始める登山 キリマンジャロへの道 Lesson 7 登山中に触れる自然

登山の楽しみにも色々ありますが、登山愛好者のどなたに聞いても、登山中、あるいは頂上から見える景色を第一に挙げるのではないでしょうか?反面、頂上を踏むことだけが目的の登山は「ピークハント」と言いますが、“ピークハントだけ”を目的に登山をされる方は、実際はかなり少ないのではないかと思います。現在、日本の登山愛好家の間では、「百名山登山」が大きなブームになっています。故深田久弥さんが選んだ100の名峰・名山を『日本百名山』と呼び、その全山登頂を目指すというもの。とは言っても、日本の山岳地形の関係で、富士山などいくつかの独立峰を除き、一つの百名山を登る上で、ニ百名山、あるいはその他の百名山にもれた山も同時に登らざるをえない、あるいは登った方が面白いコースになる場合が多々あります。
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山頂や開けた場所からの展望を楽しむため、また安全性を考慮すると当然ですが、好天のもとでの登山を好まれる登山者が圧倒的に多いと思います。また、雷や強風を伴った激しい雨天でない限り、柔らかな雨の降る中、遠くの景観ではなく近くの景色、雨に煙った原生林や、濡れて輝きを増した木々、生き生きとした高山の花々などを見るのが楽しみな登山者も少なからずいるでしょう。山の景色・自然の楽しみ方は、ほんとうに様々で、目的地(山頂)だけではなく、その“過程”に大きな楽しみがあるという意味では、旅と似ていますし、徒歩での山旅は旅の原点、と言えるのかもしれません。
地域にもよりますが、日本の山地は基本的に、麓は照葉樹林帯で、標高が高くなるに従って、夏緑樹林帯、針葉樹林帯、低木林帯と変化していき、標高2,500mを超える山々の稜線や山頂部の多くは植生に乏しく、岩稜や岩盤に覆われています。これを植生の『垂直分布』といいますが、猛禽類やライチョウなど鳥類や、クマ、カモシカ、オコジョなど哺乳類もこの分布にならっています。南北に長い国土を持つ日本では、この垂直分布とともに、地域によって違いが大きい『水平分布』が複雑に絡み合い、豊かな自然を形成しています。中には、海抜ゼロメートルから2,000mまでをカバーし、北海道から沖縄までの気候植生が垂直に配置された、屋久島のような貴重な自然を持つ島もあります。

ライチョウ
ライチョウ

キリマンジャロの植生もこの垂直分布が特徴的で、標高が高い分、日本よりさらに広い気候帯をカバーし、幅広い植生を楽しむことができます。キリマンジャロは標高の低いエリアから、亜熱帯雲霧林帯、低灌木帯、高地砂漠帯、氷冠と4つの気候帯に分けられ、植生もそれに応じたもの、加えて人の暮らしに近い裾野ではコーヒー畑などの耕作地が広がっています。流れだした溶岩によって形成されたことを物語る、ゆったりとした起伏の斜面に広がる低灌木、かつて氷河が削りとった谷間に咲いているキク科の高山植物など、見どころは尽きません。アフリカ最高峰の頂上ばかりでなく、ルート脇の自然も楽しみつつ、登山を楽しんでいただければと思います。
キリマンジャロとセネシオ
キリマンジャロとセネシオ

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羽鳥