マラウィからモザンビークへ向かう。国境が近づくと、英語の会話にスペイン語そっくりのポルトガル語が混ざってくる。ホテルに行くと「ウナ・ルームね?」と聞き返され、女性は「オラ!」と挨拶する。市場には「メルカド」と看板が出ていて、中で売っている鶏肉は「チキン」ではなく「アベ」と呼ばれ、ご飯は「アロス」だった。数カ月前、フランス語圏の西アフリカからガーナに入ったとき、突然フランス語から英語になり、道端で売られているパンが「フランスパン」から「食パン」に変わったのは衝撃を受けたが、ここでもまたアフリカの歴史をリアルに感じることになった。長い旅の道中、スペイン語圏の中南米に半年以上いたからか、そっくりの発音をするポルトガル語の響きは何か心がとろけるようなものを感じた。やがて、マラウィ式のチップス屋台は姿を消した。今、自分はまた国境を越え、違う国に入ったのだということを知る。
テテという小さな町に出た。市場に行くと、インド人やアラブ人がたくさんいて、海がある国なんだな、と改めてマラウィとの違いを発見する。いわゆる観光地にはひとつも行かなかったモザンビークの旅。でも、多くのことを感じた数日間だった。そして道はジンバブエへと続く。
文・画 吉岡健一