2011.03.18発 エチオピアの大自然と民俗、世界遺産、ゆったり・たっぷり16日間 後編

エチオピア北部の旅もいよいよ後半戦。アクスムを出発してから、次の目的地のゴンダールへ向かいます。出発してしばらく走ると、舗装道路が終わりを告げ、セミエン山塊に向かって荒れたオフロードを進んでいきます。所々、舗装工事は行われているようですが、どうにもペースはのんびりしたもの。所々、スリップしそうな崖道が続きますが、我らがマイクロバスのドライバーは鼻歌交じりですいすいと運転します。1日かけて目的地のゴンダールへと到着。

マイクロバスと、我らがドライバーのアビィさん
マイクロバスと、我らがドライバーのアビィさん

この旅いちばんの悪路且つ長時間の移動でしたが、途中でエチオピアのソウル・フードであるインジェラも食べて乗り切りました。しかし、エチオピア最高峰であるラス・ダッシェンを含めたセミエン国立公園の景観は、これぞ山岳国エチオピアの真骨頂とも言える、絶景中の絶景でした。今回の旅では横切るだけでしたが、セミエン国立公園をじっくりとトレッキングするツアーもお奨めです。『エチオピア セミエン国立公園トレックとラス・ダッシェン登頂 12日間』こちらも是非。
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さて、翌日は1日かけてゴンダールの街を見て廻ります。エチオピア北部の旅では、ここも外せないところ。17~18世紀にかけて都が築かれた古都ゴンダール、どこか落ち着いた雰囲気を携えた街です。この街での見所は何と言っても、世界遺産にも登録されているファシリダス皇帝の宮殿跡です。まるでヨーロッパの古城のような優雅な宮廷は、400年前のエチオピアのものとは思えません。皇帝1人につき城を1つ建設したそうで、ジャカランダの花が咲き乱れるお庭とセットで、とても優雅な空間でした。
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もう1つゴンダールで見所なのは、天井一面に天使が描かれている事で有名なデブレ・ベレハン・セラシエ教会です。外見だけを見ると、よくある古びた教会なのですが、1歩内部に足を踏み入れると一面の壁画と天井画に圧倒されます。何ともフォトジェニックな教会でした。
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陸路の旅は、まだまだ続きます。次なる目的地はバハル・ダルです。ナイル川の源流と言われるブルーナイル、そしてその水が流れ込む雄大なタナ湖の湖畔に栄える街です。まずは、近郊の村を抜けてブルー・ナイルの滝を目指します。滝まで歩く事30分。地元の言葉でTis Abay(ティス・アッバイ) 意味は、Tis=煙 Abay=父 又は、ティス・サット 意味は、ティス=煙 サット=水と呼ばれている滝が目前に。かつては幅400mもあったそうですが、上流に水力発電所が出来た影響と、今回は乾季だったこともあり、滝の水量は控えめです。ただ、遠くからでも目にする事の出来る水煙と、唸りを上げる轟音はさすがに目を見張りました。
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滝への軽いトレッキングを終えた後は、ボートに乗り換えてタナ湖へと繰り出します。このタナ湖には小さな小島が幾つもあり、そこには古びた修道院がたくさんあります。先に訪問したアクスムにあった『アーク』の伝説は、もともとこのタナ湖の修道院から始まっていて、エチオピアの北部、エチオピア正教の神話世界を思索する旅では、このタナ湖の修道院巡りも避けては通れません。かなりの年代が経っている修道院ですが、内部の壁画は色鮮やかに残っています。
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そういえば、上陸して最初に目に飛び込んで来たのが、細長く藁を束ねた謎の物体。一体何だろう?
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次の島へと再びボートで渡る際に謎が解けました。
地元の人達が島同士を行き来する為の渡し船だったのです。何ともまあ…。
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バハルダルでの滞在は、このエチオピア北部の旅の終盤にふさわしい盛り沢山な内容でした。
最後の夜には現地のガイドさんの計らいで、嬉しいサプライズ。誕生日の方がいらっしゃった為に、子羊の丸焼きと焚火でお祝いです。
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アディスアベバから始まって、ラリベラ⇒メケレ⇒アクスム⇒セミエン⇒ゴンダール⇒バハルダルと、約2,700kmの長い旅路を経て来ました。エチオピア北部をぐるっと一周して、再び首都アディスアベバに戻ります。最後は、あまりあくせくと観光して町を走り回ることもなく、1泊してゆったりとこの長い旅路を振り返る事が出来ました。最終日に空港へ行く前に、最後に聖ギオルギス教会に立ち寄りました。最後の皇帝ハイレ・セラシエが即位した場所でもあります。アディスアベバきっての文化遺産でもあります。
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この教会では、たまたま昼間の礼拝の時間に当たりました。今までの各土地での教会見学の際は、内部の見学が出来なくなってしまうのであえて礼拝の時間は外して観光していました。ですが、この旅行で初めて目にした礼拝の様子は、宗教の違う我々も、どこか真摯な気持ちにさせられてしまうような、荘厳な雰囲気に満ちたものでした。咳払い一つためらわれるような、張り詰めた緊張感に満ちていて、騒がしいアディスの街の中で、この場所だけがまったく違う時間が流れているようでした。旅行の最後に、エチオピアに生きる敬虔な信仰心の真髄を覗いたような気がします。
エチオピアの北部を2週間かけて一回りしてきましたが、今回の旅行はこの国の3分の1ほどに過ぎません。南部エチオピアには、今も独自の文化・風習を残す様々な民族の世界と大自然も待っています。北東部に目を向ければ、地球上で最も暑くて苛酷な地と言われるダナキル砂漠と活火山もあります。是非、また違った顔のエチオピアも覗いてみてください。
生野