2011.12.26発 中央アフリカ・ザンガ・サンガ密林保護区と コンゴ・ヌアバレ・ンドキ国立公園探訪 14日間 その2

モンディカ・キャンプに別れを告げて、次なる目的地のべリ・キャンプへと向かいます。まずは中間地点のンドキ・キャンプまで、2日前に歩いて来た道のりを戻ります。森の中で寝泊まりするのも今日で3日目、皆さんだいぶ慣れて来たのでしょう、気にされる事もなく、河の中もザブザブと歩きます。
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途中、ジェケ・ストップと名付けられたポイントから4駆のランドクルーザーに乗り換え、ンドキ・キャンプへ走ります。車で走る道のりは、かつて森林伐採業者が切り開いた道で、今は使われていないそうですが、一度切り開かれてしまった場所は、「二次林」と呼ばれ、その後に幾ら手を加えなかったとしても、同じ木でも生え方が原始林とは大きく異なってしまうそうです。つまり、過去に一度でも人間の手が入ってしまった森は、二度と元の姿に戻る事はないそうです。複雑な気分になりつつも、ボマサ・キャンプ到着。ここからは、小型のピローグ(丸木舟)に乗り換え、手漕ぎのみでンドキ河を上がっていきます。ンドキの森の息遣いを肌で感じながら、河を遡って森の奥へ、また奥へ。
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約1時間後、河べりにピローグを止めて、再び森の中を歩き始めます。今夜の宿泊地べリ・キャンプはもう目の前です。30分ほど歩いてキャンプに到着。このべリ・キャンプは、この近くにある「バイ」と呼ばれるエリアで動物の観察/研究をしている研究者の人達も数名滞在しています。彼らは、長期滞在する人も多いので、森の中にコテージが作られていて、我々が宿泊する部屋もその中の幾つかです。夜中にマルミミゾウがやってきたりする事もあるので、高床式の造りになっています。簡素な部屋ですが、雰囲気は抜群。そうそう、森に滞在中は食事も全て持ちこむ事になるので、シンプルなものが中心になります。パンと缶詰がメインになり、新鮮な野菜などはまず食べられませんが、フルーツ類は何とか…。
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この日の午後と、翌日の丸1日は、べリ・キャンプから森の中を小一時間ほど歩いたところにある「べリ・バイ」へ向かいます。この「バイ」ですが、ピグミーさん達の言葉で草原とか湿地帯を意味します。文字通り、森の中のゾウ道を歩いていると、突然目の前が開けて、広大な草原湿地帯が広がります。かつては森の中を流れる小川だったところが、長い年月をかけ、マルミミゾウがその周りを歩き回り、土を掘り返すことによって湿地帯が出来上がったそうです。地中にはミネラル分が豊富に含まれていて、マルミミゾウだけでなく、ニシローランドゴリラやシタトゥンガなど、他の動物達にとっても格好のエサ場となっているのです。
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バイの入口には、シンプルな観察台が作られており、現在も毎日のように研究者の人達が、ここで動物の観察・研究を行っています。そんな彼らのお邪魔にならない程度に、我々も静かに動物観察をします。アフリカ各国のサファリツアーでも、「動物観察は自然が相手」という言い方をよくしますが、ここでは徒歩やサファリカーで動物にアプローチするわけではなく、根気よく観察台で待っているだけなので、本当に全てが運次第です。動物が一切出てこないような時は、ついウトウトとしてしまいますが、観察台周りの昆虫観察も、これはこれで味わい深い…。
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やっと出てきてくれました!マルミミゾウです!!ニシローランドゴリラの群れや、シルバーバックの姿も確認出来ましたが、いかんせん距離が遠いので、なかなか写真撮影には向きません…。写真撮影を目的にされる方は、カメラの望遠レンズは最低でも500㎜ぐらいをご用意ください。他に観察できた動物はシタトゥンガ、シロクロコロブスなど、希少なボンゴが見れるかと期待していましたが、本日は残念…。
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べリ・キャンプで2泊した後は、再びピローグでンドキ河を下り、最初に訪れた森の入口ボマサ・キャンプへと向かいます。全部で5泊6日の短い滞在でしたが、いよいよ、ンドキの森ともお別れです。1週間にも満たない期間でしたが、1日1日、全身で体感する『野生』は本当に充実した時間です。個人的にはこの森の滞在で、最も印象に残っている事は、野生動物の姿でも、樹々の威容でもなく、「夜は暗い」ということでした。そんな当たり前の事を忘れてしまっていたのでしょうか。背の高い木々の中で迎える森の夜は、日が落ちてからやって来ません。ふと気が付いたら、いつの間にか足元からジワジワと闇夜が迫ってくるような感覚です。湿度の高い気候も手伝ってか、身体の周りにねっとりと闇がまとわりついてくるような気さえします。「ああ、暗いという事は、こんなに怖いんだ」と、何だか子供のように夜の暗さを受け止めていました。
また、森の中では、虫の声、鳥のさえずり、木々が擦れ合う音、小動物が駆ける音、ゴリラやゾウの咆哮、本当に様々な『野生の音』が鳴っています。少しだけテントの外に出て、夜の闇の中で、じっと耳を澄ませてみると、その『野生の音』は驚くほど大音量で、終わりのない音の洪水でした。
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その3へつづく
生野