2011.12.26発 中央アフリカ・ザンガ・サンガ密林保護区と コンゴ・ヌアバレ・ンドキ国立公園探訪 14日間 その3

さて、べリ・キャンプを出発して、ンドキの森の入口であるボマサ・キャンプへと戻っていたのですが、途中再びランドクルーザーにて揺られている最中、突然茂みの中からボンゴが飛び出してきました。あまりに咄嗟の出来事だったのと、狭い車内でスシ詰めになっていたので、残念ながら写真を撮る事はかないませんでしたが、僅か数秒間ですが、その立派な角や、美しい毛並みを堪能することが出来ました。実物はかなりの巨躯でした。
そんな嬉しいハプニングもありつつ、ボマサ・キャンプに到着。初日に預けていた大きな荷物を引き取り、荷物整理をしながら、ちょっと早めの昼食です。久しぶりの冷えたビールに、駆け付け一杯の方も…。
昼食後、少しの時間でしたが、再び西原さんのご厚意でこのンドキ周辺のお話を聞かせて頂きました。今日から向かう事になる最終目的地のザンガサンガ密林保護区と、そこでたくさん出会う事になるマルミミゾウのお話です。マルミミゾウは、ケニアやタンザニア、ボツワナ等でよく会う事の出来るサバンナゾウとは、違う種類のゾウです。実は500万年前ぐらいからは既に違う進化をしていた動物だったと言われています。これは、生態系としては、アジアゾウとマンモスぐらい違うそうです。
体躯はサバンナゾウよりも小さく、ゾウと言えば…の大きな耳も、少々こじんまりした形をしています。そして、大きな違いは牙です。真っすぐに伸びた長い牙は、地面を掘り返すぐらい硬く、このマルミミゾウの象牙はハード材と呼ばれ、サバンナゾウや、アジアゾウの象牙とは質が異なり、象牙の中でも特別なものなんだそうです。
アジアでは、昔から欧米に比べて、象牙の需要が盛んでしたが、このマルミミゾウの象牙は固くて彫りやすいのでとても重宝され、判子や三味線のバチによく使われるそうです。象牙の需要が高い国の1位は中国、2位は日本。但し、この2ヶ国だけが、圧倒的に抜きん出ているそうです。現在では、判子はほぼ使われなくなりましたが、三味線のバチの需要は健在で、しかもこだわりを持っている人が多いそう。大きさと形状から、1本の象牙からは1本のバチしか作る事が出来ないので 、日本のプロ三味線奏者の数から計算すると、年間500頭分の象牙が必要になる可能性が高いそうです。もちろん、1989年のワシントン条約以降、輸入は禁止されているので、20年間は過去の在庫のみで、バチの需要に対してやりくりしている事になりますが、はたして……? ?
三味線といえば、日本の伝統芸能・歌舞伎の世界でも欠かせませんが、まさかそんな話をアフリカ大陸の熱帯林の中で耳にするとは思いませんでした。
カメルーンとコンゴ盆地に生息するマルミミゾウは、象牙の非合法取引や消失してゆく保護地区に対する対策が打たれなければ、10年以内に絶滅の可能性もあるそうです。
01
マルミミゾウへの予備知識も頭に入れたところで、再び国境を流れるサンガ河を北上し、いよいよ中央アフリカ共和国へと向かいます。相変わらず、河の両岸には熱帯雨林が広がります。途中、河の中でもマルミミゾウの姿を発見!(下記の写真の右上)
深い河すら越えて、縦横無尽に熱帯雨林に君臨しているのです。
02
行きと違い、大きな河をピローグで遡って行くにはなかなか時間がかかり、中央アフリカ共和国のザンガサンガ密林保護区に辿り着いたのは夕方になってしまいました。途中で河沿いの掘立小屋(失礼)でコンゴ⇒中央アフリカへの出入国手続きも済ませ、今夜は保護区への入口にあるバヤンガという街のロッジに宿泊します。河沿いにあるロッジは、ンドキの森のように森の中に寝泊まりするわけではないので、なかなか快適なロッジが建てられていました。
久しぶりのフカフカのベッドと熱いシャワーが嬉しい。
03
翌日、この日は終日ザンガサンガの森を堪能します。まず午前中はマルミミゾウ観察に「ザンガ・バイ」を目指します。この「ザンガ・バイ」は、先に出て来たンドキの森の「べリ・バイ」と同じく、森に住む動物達の絶好のエサ場となっており、多くの動物達が集まるので、同じように観察台が建てられています。緑が溢れる草原湿地帯ではなく、どちらかと言うと泥の部分が大半を占める見た目にも湿地帯といった場所です。
保護区の入口から小一時間、バイまでの道のり、再び森の中を歩きます。ンドキの森程ではありませんが、ザンガの森でも河の中を歩きますので、下半身は濡れても構わない格好で。
ザンガの森での大きな違いは、歩くゾウ道が非常に大きい事でした。普通に車が入れるんじゃないかと思うほど幅広で大きい。これは、生息しているマルミミゾウの数が、ンドキの森に比べて圧倒的に多い事が理由だそうです。
04
「ザンガ・バイ」に到着。ンドキの森よりも資材が運びやすいからでしょうか、比較すると立派な観察台が建っています。眼前には、マルミミゾウの群れ。バイの面積自体も、ンドキの森より大きく広がっています。よく見ていると、何ヶ所か決まったところばかりに、何頭ものゾウが代わる代わる訪れ、泥を掘り返した穴に鼻先を突っ込んでいます。地中の中に彼らの好きな“何か”があるのでしょうか。待ち切れなくて、子ゾウもお母さんの周りをウロチョロ。そんなに美味しいのかな。
05
「べリ・バイ」と違って、まる1日はおらず、昼食後までここで過ごしてから引き上げ、再び保護区の入口へと戻ります。入口から4駆のトラックに分乗して森の別の場所へと向かいます。途中、村に立ち寄るとトラックの荷台に次々とピグミーさん達が乗り込んできました。午後は、地元のピグミーさん達の案内で森歩きです。道中も荷台の上で、賑やかに大合唱。最初は、ワーワー賑やかだなあと思っていたら、耳を澄ませているといつの間にか、何人もの声がとても美しく重なり合っていて、1つの大きな歌の洪水が出来上がっていきました。「密林のポリフォニー」と呼ばれるピグミーさん達の歌声。なかなかの聴き応えでした。
森に着くと、早速何人かが片手にナタを持ち、もう片手には束ねた網を持って、森を切り開いていきます。今までの森歩きと違い、ゾウ道を歩くわけではなく、最初は藪の中をザクザクと切り進んでいくので、あちこち引っ掛かって、思ったより大変でした。(森の中は薄暗いのでなかなかピントが合わず…。ピンボケばかりですみません。)
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この森歩きの目的は、ピグミーさん達の狩りの仕方、「ネットハンティング」と呼ばれる方法を見せてもらう事でした。森の中の蔓を細かく束ねて、凄いスピードでロープ状にしてしまいます。細かく束ねたものをさらに束ねて…、網を作って、それを木々の間に張って、動物を追いたてるように囲い込んで捕まえます。何度か網を張ってトライするのですが、なかなか捕まらず…。
07
歩き疲れて来て、「今日はもうダメかな…」と思ったところで、甲高い鳴き声が!
1頭の小さめのブルーダイカーが網にかかりました。ちょっとびっくりしたのはその瞬間、後ろの方をダラダラ歩いていたおじさん1人が、突然飛びかかるような速さで駆けて行き、もがいているブルーダイカーの頭に棍棒を1振り。一撃で仕留めてしまいました。あまりにも瞬間の出来事だったので、びっくりしている間の一撃で終わってしまいました。何ともまあ…。
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今夜のおかず(?)を手に入れたおねえさんも、とっても嬉しそう。
09
森を出たところで、狩りの締めくくりに森の歌声を大合唱。共に森を歩いたお客さんも一緒に大合唱。デモンストレーション的ではありましたが、やはり噂に違わぬピグミーさんの合唱は素晴らしいものがありました。声音だけで構成される歌ですが、何人もの声が重なり合い、1人1人短いフレーズを紡ぎ合ってハーモニーを重ね、気が付くと歌の洪水の中に飲み込まれてしまいます。ンドキの森の中で、夜中に耳を済ませた時の森の中から聴こえる様々な音の洪水と同じような感覚でした。やっぱり、ピグミーの人達は、『森の人々』なんだと変なところで再確認させられました。ピグミーさん達の歌ですが、以前に研究している人の話を聞いた事がありますが、人が亡くなると森の中で葬儀を行い、(葬儀というよりは、森に還すという事らしいです)その夜に、亡くなった人は残された人々の夢の中に出てきて歌を残していくそうです。目が覚めて、その歌を忘れないようにみんなで歌いあうことで、合唱が歌になって、またその歌が伝わっていくんだとか。
今回の『森の旅』の締めくくりにふさわしい嬉しいサプライズでした。
10
翌日からは、来た時と同じようにまた陸路×2日、飛行機×2日の長い長い道のりを経て日本へと帰ります。ですが、1週間以上アフリカ中央部の森に滞在し、全身を使ってたっぷりと野生のエネルギーを浴びた皆さんは、体力的には疲れていても、気持ちは充実しきっていたのではないでしょうか。
日程的にも効率は良くありませんし、体力的にもハードな部分はあります、快適さ便利さなどは望むべくもないような旅路ですが、観光地を訪問するだけの旅行とは一味もふた味も違う旅行を体験して頂けたのではないでしょうか。アフリカの大自然に癒されるというよりは、アフリカの大自然を味わい尽くして、体中の細胞にパワーをもらう、そんなツアーです。
2012年度も、8月と12月の2回を予定しています。査証手続きや予防接種など、出発前の準備も煩雑なものが多く、なかなか気軽にツアー参加というわけにはいかないかもしれませんが、是非今年もお待ちしています。自然保護の問題、密猟や森林伐採の問題、野生と人間が現在進行形でせめぎ合っている最前線の場所です。是非、アフリカ熱帯林の『今』を体感しに来て下さい。
中央アフリカ・ザンガ・サンガ密林保護区とコンゴ・ヌアバレ・ンドキ国立公園探訪 16日間
おまけ。
これだけは、さすがに味わい尽くせませんでした。
食感は、口の中で溶けて、とてもクリーミーなんだとか。
ぞぞぞ…。
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生野