WILD AFRICA 23 マラマラでライオンの子供を撮る

昨年の10月、南アフリカのマラマラ私営動物保護区で、小さな子供のいるライオンのプライド(群れ)に出会う機会があった。子供たちは、まだ生後2~3カ月程度で乳離れもしていなかったが、活発に動き回って車のすぐそばまで来てくれた。ネコ科動物の子供が間近で撮れたのは、たまらなく嬉しかった。
しかし、このような被写体の撮影に際しては、注意も必要となる。巣穴の場所が分かっていても、こちらが不用意に近づき過ぎて警戒されてしまうと、子供たちは巣穴の外に出てこなくなるし、相手に過剰なストレスがかかると、母親が巣穴の場所をよそへ移しかねないのだ。そのような事態は、無防備な子供を危険に晒すことにもつながるので、絶対に避けねばならない。
この点マラマラのような私営動物保護区では、長年にわたり動物たちがサファリカーの存在に慣らされてきたので、かなり近くまで寄れる。また、車の運転もしっかりと訓練を受けたガイドが行うので安心だ。加えて、南アフリカやボツワナの私営保護区では、動物たちの安全に対する高い意識を持っており、生後すぐの赤ん坊がいる動物の巣穴には観光客を連れて行かないという。こうすることで動物に無用なストレスを与えずに済み、子供たちは徐々に人や車に慣らされてゆくのだ。
撮影条件の面でも、私営動物保護区のほうが通常の国立公園などより圧倒的に有利だ。と言うのも、サファリカーで道を外れてブッシュに分け入ることが許されているため、ポジションをかなり自由に決められるし、車には屋根がないので、撮影アングルの確保が実に容易なのだ。日が暮れてからもしばらく撮影が続けられたりするなどの「オマケ」までついてくる。もちろん、その分値段はかなり高いのだが、それだけの価値があるという自負があるからこその価格設定なのだ。
ところで、一見無邪気に見える子ライオンの遊びは、その実彼らが捕食者として生き残ってゆくために欠かせない貴重な訓練でもある。獲物に忍び寄り、距離とタイミングを見計らって飛びかかった後、爪を立てて相手を倒し、のど笛か鼻面に噛み付いて窒息させる。この一連の動作のどれか一つが欠けるだけで、狩りは失敗に終わってしまう。ライオンたちは、子供のうちに基本的な動きを遊びの中で身につけ、大人の狩りに同行できるようになると、実際の現場を体験し一人前になってゆくのだ。
撮影データ:ニコンD800、AF-S 500mm f4D II、1/800秒 f5 ISO1250
ライオン
英名:Lion
学名:Panthera leo
体長:♀158〜192cm  ♂172〜250cm
体重:♀122〜182kg  ♂150〜260kg
寿命:13年
(数値はいずれも成獣)
写真・文  山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com