WILD AFRICA 25 セグロジャッカルの狩り

一般的に、哺乳類であれ鳥類であれ、狩りの瞬間を撮影するのは難しい。そもそも狩りの場面に出くわす確立自体が低い上に、いざことが起きると一瞬でケリが付いてしまう。相手をファインダーの中に捕らえるどころか、肉眼で追うのがやっとだったりすることもしばしばだ。さらに、追われた獲物は逃げ切ろうと必死になるから、肉食動物の狩りの成功率は決して高くない。一度失敗したら、次の狩りまでには相当間があるのも普通だ。
撮る側としては、決まった場所と時間に獲物がやってきて、決まった方向から獲物に襲い掛かる肉食獣がいてくれればこれほど楽なことはない。しかも一発勝負ではなく、何度も繰り返し同じような場面を撮れれば、「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」方式に成功率は上がるに違いないのだ。そんな好都合なことが現実に起きるわけがないと思われるかもしれないが、時としてばかばかしいほどによい条件が揃うから自然は面白い。
これは南部アフリカのカラハリ砂漠での出来事だ。そこは小さな水場で、早朝に行っても2頭のセグロジャッカルがゴロゴロしている以外特に変わったことはなかった。ところが、7時半をまわった途端、シロボシサケイというハトの仲間が群れをなして水を飲みにやってきた。最初は20羽程度が上空を旋回し、地上の様子を伺うのみだったが、やがて一羽が喉の渇きに耐えかねて降下し始めると、たちまち数十羽が地表に降り立ち、水を飲んではまた飛び立ってゆくようになった。その間にも上空を旋回するサケイの数はどんどん増えていった。
近くの藪に隠れていた2頭のジャッカルは、サケイたちが降下を始めると、ピンと耳を立て、上空へと注意深く視線を注いだ。そして鳥が着地する寸前、揚力を失って最も無防備になる瞬間を狙い猛然と牙をむいて襲い掛かった。成功率は5回に一回程度だったが、何しろ朝の7時半から10時くらいまでの間に数百羽が入れ替わり立ち代りやってきたため、いくらでもやり直しがきき、ジャッカルはたらふく鳥を食べるに至った。
狩りをするジャッカルにとっての好条件は撮影者にとっても同じで、一回撮り損ねても、すぐさま次のチャンスがやってくるというのはこの上なくありがたかった。この日は、十数羽のシロボシサケイがジャッカルたちの腹に収まり、私も狩りの瞬間を繰り返し撮ることができた。こんな風にリカオンやヒョウの狩りが撮れたらいいのにと、さらに都合のよいことを考えてしまうから人間の欲望は際限がない。
撮影データ:ニコンD4、AF-S VR 80-400mm f4.5-5.6G、1/2000 f11 ISO1000
セグロジャッカル
英名:Black-backed Jackal
学名:Canis mesomelas
体長:70〜100cm
体高:38cm
体重:6.5〜13.5kg
寿命:6年
写真・文  山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com