WILD AFRICA 35 動物写真とソーシャルメディア

WILD AFRICA 35 動物写真とソーシャルメディア

アフリカの動物の中でもヒョウは個人的に好きな被写体で、これまでも頻繁に撮影してきたが、子供や親子の姿を写真に収めるのは中々難易度が高く、あまりいいものは撮れていなかった。ヒョウは警戒心が強く、人目に触れる場所に子を連れ出すことがあまりないし、子供の成長が早いので撮影できる期間も限られているからだ。
そんな中、数年来頻繁に訪れているボツワナのマシャトゥ動物保護区で、3頭のメスのヒョウにほぼ同時に子供が生まれ、それらが元気に育っているという情報が入ってきた。この春くらいから、現地でいつも世話になっているガイドや、南アフリカ人の写真家仲間らのフェイスブック投稿が、子ヒョウの画像だらけになったのだ。私は居ても立っても居られなくなった。何しろ母親3頭のうち2頭は、とても車慣れしていることでよく知られており、サファリカーが近づいても逃げ隠れしないので、3〜4日あれば親子の姿が撮れる公算が極めて高かった。そこで7月中旬、南アフリカ経由でボツワナに入りマシャトゥで4泊した。結果は予想どおりで、首尾よく撮影に成功した。写真はそのうちの一枚だ。
インターネットとスマートフォン、そしてソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の発展/普及は、世の中に実に多くの変化をもたらしている。それは自然写真の現場も例外ではない。様々な撮影地の情報が、場合によってはほぼリアルタイムで手元に届くようになったのだ。これまでは文献や口づてが頼りだったため、情報の“鮮度”や“精度”に問題があり、実際に現地に行ってみるまで分からないという不確定要素の部分が大きかったが、それらがかなり解消された感がある。
一方、あまりにも多くの情報がネット上に溢れ、ゴミと有益なものとを取捨選択するための、ある種のリテラシーが要求されるようになったのも確かだし、自分が日本から出られない状況にある時に、友人知人がアフリカのフィールドで楽しくやっているのを目にするのは、悔しさとフラストレーションの元にもなる。また、様々なサービスが次々登場するので、いちいちついていくのも楽ではない。現在のところ、私もフェイスブックとインスタグラムを使っているが、正直手一杯だ。
ちなみに、マシャトゥへは来年2月にツアーを予定している。ヒョウは生後1歳半ほどで独り立ちするので、生き残ってくれていれば、まだ母親と共にいる大きくなった子供たちの姿を見られるだろう。
撮影データ:ニコンD500、AF-S Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6G VR、1/160秒 f/6.3 ISO800
文・写真 山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。少年時代を西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物や風景の写真を撮り始める。2000年以降は、南部アフリカを主なフィールドとして活躍。サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。写真集「From The Land of Good Hope(風景写真出版)」、著書に「ライオンはとてつもなく不味い(集英社新書ヴィジュアル版)」がある。www.goyamagata.com