日帰りでの低山ハイクや登山も楽しいものですが、やはり登山やトレッキングの醍醐味といえば、“山に泊まって”数日間、あるいはそれ以上の長期間にわたって山を歩くことが挙げられます。山で宿泊するとなったら、一般的に選択肢は2つ。テント泊か山小屋泊になります。登山をされる方の年齢、体力、好みにも左右されますが、中高年や女性の登山者が増えた現在では、テント泊よりも山小屋泊を志向される方のほうが多いような気がします。
テント泊はプライベート空間が確保でき、行動する上である程度の自由が得られますが、荷物は多く重くなります。一方の山小屋泊は、プライベート空間は皆無(一部貸切り部屋を利用できる小屋もありますが)。見ず知らずの登山者と隣り合って寝なければならない代わりに、多くの小屋では食事が提供され、布団が準備されているところも多く、暖かく、乾燥室や時には風呂もあったりして、快適な滞在が可能です。個性派が多い山小屋のオヤジ(失礼!)の話も楽しめ、プライベート空間がないということは、他の登山者との交流や情報交換も期待できる、という良い面もあります。
山小屋といっても、日本と海外ではかなり趣が異なりますし、国によってもかなりの差異があります。日本の山小屋の中にも、板の間、土間に囲炉裏、食事は自炊、室内も煤けて、お世辞にもキレイとはいえない(が、ファンも多い)渋~い小屋もあれば、まるで旅館やホテルのように清潔で快適な山小屋もあります。ヨーロッパやアジアの有名な山、アルプスの山々やボルネオのキナバル山などの山小屋は、シャワーこそ水の場合がありますが、ホテル並みに設備が整っているものが多く、非常に快適です。もちろん、寝袋を持参しなくて良い小屋も多くあります。
一方、アフリカの山々はどうでしょう?フランス山岳会が建てたネルツナー小屋のあるモロッコのツブカル山を除き、キリマンジャロをはじめアフリカの多くの山々では、日本でいえば「避難小屋」的な非常に簡素な小屋が多く、料理は出ませんので、コック同行&食材持参で宿泊する必要があります。シャワー施設は皆無、寝具はマットレスのみですので寝袋は必携、ソーラーを利用した電気ですので、日没後はヘッドランプが必要になります。それでも、テントではなく小屋に泊まれるということは、悪天候時の安心感を与えてくれます。ガイドとマンツーマンでの登山の場合はともかく、何人かのパーティーでの登山の場合、部屋は貸切りが基本と、テントと比較すれば宿泊は格段に快適です。
山での宿泊の最終的な到達点はテント泊だとしても、初心者の方は至れり尽くせりの山小屋泊から始めて、徐々に渋~い山小屋に慣れていただくと同時に、小屋やトイレを清潔に使い、電気・水の無駄遣いをしないなど、山小屋泊のマナーも身に着けていただければ、キリマンジャロの山小屋でも何不自由なく快適に滞在できるようになるでしょう。
羽鳥