Africa Deep!! 43 アフリカの砂漠に打ち捨てられた砂上の楼閣

このところ「時間により色彩が刻々と変化する赤い砂漠」でツーリストに人気のナミビア。この国には他のアフリカにはない「地球の古い時代の記憶」というものがあちこちに露出しており、私もまた訪れたいと思っているところだ。
アフリカ大陸全体にさまざまな地下資源が埋蔵されているのは最近よく耳にするようになった。携帯電話をつくるのに欠かせない貴金属もある。しかし貴重な地下資源といったらやはりダイヤモンドの右に出るものはないだろう。その中でもナミビア産のダイヤモンドは品質が良いということで事情通にはよく知られている。
その理由として、ナミビア産のは「海洋ダイヤモンド」と呼ばれるもので、もともとは海中に存在していたためキズが少ないのだという。そしてその海洋ダイヤモンドはナミブ砂漠一帯に分布している。
金鉱と同様、富が埋もれる場所には人が一攫千金を夢見て集まるのはいずこも同じ。砂漠という本来は人間が住むことができない場所にも、かつて人が集った。日露戦争よりさらに時代をさかのぼる1908年、ナミビアが「ドイツ領南西ナミビア」と呼ばれていた植民地時代に砂漠の中でダイヤモンドが発見されると、大西洋岸の港町との間で鉄道が敷設され、たくさんのドイツ人が入植してきた。
ドイツ風の住宅や学校、病院、さらには発電所や劇場、カジノなども建てられ、コールマンスコップという街が忽然と姿を現したのである。当時アフリカで初めてのレントゲン機器が導入されるなど、コールマンスコップはダイヤモンドという小さな光り輝く石のおかげでアフリカでも最も裕福で先進的な街になった。
ところがこの砂漠の街は突然打ち捨てられた。その石が採れなくなったからである。戦後の1954年には完全に廃れた。街の最盛期はわずか20年ほどだった。栄枯盛衰。人間の欲望の象徴のようなこの砂上の楼閣は、いまはただ風が舞い砂に日々埋もれていくのみである。
写真・文  船尾 修さん

船尾修さん
1960年神戸生まれ。写真家。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、いつのまにか写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。第9回さがみはら写真新人賞受賞。第25回林忠彦賞受賞。第16回さがみはら写真賞受賞。著書に「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から~狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」「世界のともだち⑭南アフリカ共和国」「カミサマホトケサマ」「フィリピン残留日本人」など多数。元大分県立芸術文化短大非常勤講師。大分県杵築市在住。
公式ウェブサイト http://www.funaoosamu.com/