乾季のケニア

2011年10月19日出発、個人手配でケニアへご旅行された日比野 倉氏 様からのレポートです。
10月中旬のケニアは、初めてである。乾季の時期は、草丈も短く動物も見易いという期待を持って出かけた。乾季の時期にチーター親子に2回出会った。大型肉食獣の出産時期でもないのに珍しいし、チーター、ハイエナ、ダチョウ、ゾウ、イボイノシシ、草食動物の親子に出会った。
日本からナイロビまでエミレーツ航空よりカタール航空の方が到着時刻が早いので、初めてカタール航空を利用した。しかし、到着時刻は1時間ほど遅れた。待っていたドライバーと対面し、車へと荷物を運んでナクル湖へ向かった。この時期のナイロビ市内は、ジャガランダの花でいっぱいになると聞いていたが、話によるとこの年の花の開花は、いまいちだということだが気候の影響なのか。曇り空の夕刻にナクル湖に到着し、小雨の湖岸道をゆっくり車を走らせた。動物が現れそうな気配はなかったが、道に3頭のメスライオンが歩いていた。他に動物が現れそうもなく小雨が降るのでロッジへ向かった。9年前に宿泊したロッジだが記憶に残っていたので、施設、敷地内も迷うことなく問題はなかった。夕食の時レストランで中国人の多いことに気がつく、現在の経済事情を反映していた。
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次の朝、お昼のランチボックスを持って曇り空の下湖岸の道をゆっくり走り出した。ヒヒの群れと数等のシマウマがいる。しばらく車を走らせて行くと数等のキリンがアカシア林の手前に立っていた。空の雲の合間から陽射しが差し込んで明るくなった湖岸に着いて目に入ったのは、沢山のモモイロペリカンだった。フラミンゴで知られるナクル湖は、ペリカンの湖になっていた。ペリカンの群れは初めて見るから新鮮だった。乾季のわりに雨量が多くて水嵩が増し湖の環境が変化した為だろうか。高台のビューポイントから湖を見るとペリカンの群れがいる場所は、小さく見えた。いつしか天候が、乾季らしい青空となった頃、マサイ・マラへ車を走らせた。
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マサイ・マラで迎えた朝は、快晴だった。日の出前にロッジの池にカバを見に行くと水から上がっているカバが数頭いた。6時半前にロッジを出た。晴れているが靄がかかっていて遠くに朝陽に照らされた10頭ほどのゾウが草を食べながら移動していた。10分ほどゆっくり車を走らせていると、ドライバーが30メートル程離れたブュシュの方に視線を送ると、「ヒョウ」と一言いって車をブュシュの方向に向けた。近づいて行くと朝陽に照らされた一頭のヒョウが座っていた。太陽で体を温めて毛繕い中だ。数年前、顔を洗うようなしぐさのヒョウを見たことはあるが、朝はリラックスしている。木の上では見せないポーズも見せてくれた。しばらく私たちの車1台だけであったが、数分後には3台の車が傍に停車していた。ヒョウを発見してから、15分ぐらいで毛繕いをしてブュシュの中に消えていった。
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陽が少し高くなってきた広いサバンナに出るとガゼルやバッファローの群れ広がって草を食べていた。しばらくして朝食を摂りにロッジへ戻った。このロッジの庭にやってくるサバンナモンキーは以前より減った。レストランにある紅茶のティーバックの箱を開けて持ち去っていくのをよく見たが、毎日、追い払っているようだ。朝食を摂るとランチボックスを持ってサバンナに向かった。水場でイボイノシシの親子が水を飲んでいる。陽も高くなり気温が上がってきた。木陰に若い2頭のオスライオンが寝ている。寝姿を見ていると体は大きいが、やはり猫科動物だと感じる。しばらくすると、ドライバーは川の方へ車を走らせた。ヌーの川渡りはもうピークではないが、シマウマとヌーの群れが水深の低くなった川を行ったり戻ったりして水を飲んでいる。川渡りという光景ではなかったが、それなりに興味を惹く光景だった。少し小高い丘の上でキリンの親子、ヒナを連れたダチョウのカップルを見た後、アカシアの古木の傍に車を止めてランチボックスを開いた。チキン、サンドイッチ、ヨーグルト、フルーツジュース、リンゴとオレンジが一個づつを心地良い乾いた風の中で完食。
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その後動物を探しながら、サンドリバー沿いをマラ川の方へ向かった。小さな川の傍に2頭の若いオスライオンが穏やかに寝ていたが、ライオンの頭数がかなり減ってきていると聞くと将来は希少動物になり得る。マラ川に着いたが、川に動物のほとんど気配はなかった。国境の標識を越えてタンザニア領域に入る。数年前にも来た場所だ。空は曇ってきた。日中であるが何も暑さは感じることもない。生き物の気配がないのでマラ川を後にしたら、見通しの良い場所にライオンのカップルがいた。2回の交尾を観察して写真を撮ったが、2回ともメスから誘いをかけていた。遺伝子を残す行為に関してメスの方が積極的なのだ。その後は、ブチハイエナの群れを発見した。1頭のメスが授乳中。ハイエナの授乳は初めて見た。少し晴れ間が覗いてきた夕方、キリンとハイエナを見ながらロッジへ戻った。
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次の朝も6時半前にロッジを出たら、すぐに背中にウシツツキを乗せた3頭のエランドがいた。よだれが、朝の光に照らされて光っている。しばらく車を走らせるとゾウの群れがブッシュの中から現れた。ゾウの体に朝陽か当たってできた陰影がワイルドな印象を与えた。自然写真のイメージ作りには光の加減が大きく影響する。私は、国内で外にいる猫も撮るが、動物を撮る時はフラッシュは使わないし、フィルター類も一切使用しない。
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ゾウを見た後、広いサバンナを10分ほど車を走らせると2台の車が止まっていた。視線の方向に目を向けると黒っぽい動物が動いていた。サイが3頭。道からはかなりの距離があるが、カメラの望遠レンズで十分観察できる距離だった。マサイ・マラでクロサイは9年前にブッシュから出てきたカップルを見たことがある。このところ、マサイ・マラでクロサイを見かける回数が増えたと聞く。胴長短足でも走ると速いのだ。ナミビアでかなりのスピードで走っているサイを見たことがあるが迫力があった。3台の車でクロサイを見ていたが、他の車に発見されると数台の車が走ってきたのでその場を去ることにした。
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10分ほど走ると、また2台の車が止まっていた。小さなブッシュの傍に2頭のチーターが寝ていた。できるだけ低いアングルで撮りたかったので、車の窓を開けようとしたら砂が詰まっていて開けにくく、砂をこする音を出してしまった為、寝ていたチーターを起こしてしまった。隣にいた車の女性に睨まれたが、動いてくれたことで違うシーンが撮れた。2頭は、車の前を横切ると遠くのブッシュを見つめている。チーターの視線の先には移動するシマウマの群れがいた。シマウマも2頭のチーターに気がついている。微妙な距離を保ちながらチーターは少しづつ前進し座り込んだ。狩りのシーンが見られるかもという期待が膨らんできた。空には1羽のハゲワシが旋回している。車は3台だけだったが、あっという間に10台以上の車が走ってきた。道は渋滞だ。しかし、しばらくすると2頭はあきらめて戻ってきてしまった。ドライバーは、すぐチーターの行く方向を予測して車を走らせ先回りしてくれたので、歩いてくる正面からのシーンが撮れた。サバンナに這いつくばって撮ってみたいが、それは許されないだろう。チーターは、日差しが高くなって暑いのでブッシュの陰へ移動し寝てしまった。チーターの狩りのシーンはなかなか見ることはできないものだろう。全速で走る姿も見てみたいものだ。日差しが高くなり車の中が暑く感じるが、窓から入ってくる風は心地良い。
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大きい水場で数頭のシマウマが水を飲んでいた。乾季とはいえ水場は結構あるものだ。それとも例年より雨量が多かったのだろうか。正午近くなって干上がりかけそうな小さな川でゾウの親子が泥水をかけていた。あまり、動物を見かけなくなったのでランチを摂りにロッジへ戻った。ランチにロッジに戻って、トイレの窓から外を見ると、サバンナモンキーが遊んでいた。人の気配がしないと警戒することのない自然な動きを見ることができる。ランチを摂ってから、ロッジの池にカバを見に行くと観察小屋には誰もいなかったのでしばらく、ゆっくり観察できた。このロッジは、カバの池があるのでロッジにいても時間をもてあますことはない。夜は、ロッジの傍まで来て草を食べているので池の近くの部屋に宿泊したら、夜から早朝はひとりで外に出ない方がいい。午後のゲームドライブは、ゆっくりと16時前にロッジを出た。アフリカハゲコウとカンムリヅルが数羽いる水場を発見。胴体の色は類似しているが首から上は対照的でもある。ゆっくり車を走らせていると、シマウマ、ゾウ、遠くにダチョウがいた。
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見通しの良い広いサバンナの道で、ドライバーが車を止めた。遠くの小高い蟻塚を見て、チーターと一言。午後の虐光と枯れた草ですぐに発見できなかったが。ドライバーの視線方向にカメラを向け望遠で見るとチーターの親子が見えた。3頭の子供が親の傍で遊んでいた。日差しが柔らかくなってくる日没前の時間は、子供が遊ぶ時間とドライバーは言った。子供の背中に生えた毛が白い輪郭になって枯れた草の中に体を浮かび上がらせた。1頭が走り回っている。ドライバーが近くで見たいかと聞いてきたので、レンジャーに見つかると罰金と警告で迷惑がかかるから、このままでいいと答えた。今は、ヒョウとかチーターのいそうな場所には、レンジャーが隠れていて、オフロードをしたとたんに現れるとドライバーは言う。サバンナで警告されるより事務所に連れて行かれて警告されるとus$100の罰金が科せられるそうだ。それを聞かされてオフロードをさせることはできなかった。しかし、ドライバーは、「FEW MINUTES」と言って車をチーター親子の方向にゆっくりと蛇行しながら走らせた。360度見渡せる見通しの良い場所だったが、私は当たりを警戒した。レンジャーに捕まったらドライバーに迷惑がかかってしまう。親子に近づくと親は何も警戒することもなくじっとしていた。チーターも近づいてくる車には、もう慣れてしまっているはずだ。マサイ・マラが最も、してはいけないオフロードする動物保護区だ。3頭の子供はじっと車の方を見つめている。親がゆったりしていると子供も慌てることなく親の傍にいる。親が1頭の子供の頭を舐め毛繕いを始めた。2頭は、親の乳首をまさぐっている。子供の背中の柔らかそうな毛が、ゆるい風になびいた。数年前、ライオンの授乳は見たことがあるが、チーターの授乳シーンは初めてだ。子チーターの顔は、若干レッサーパンダに似ているような気がする。ドライバーがそっと助手席のドアを開け親子をコンデジで撮っていた。日没前の柔らかい光の中でゆったりと授乳するチーター親子に出会えた数分は、無理してオフロードしてくれたドライバーのおかげだ。しかし、規則違反であることと、こういう行為がサバンナを車の轍だらけにしていくだけに複雑な気持ちだった。数分でチーター親子の傍から離れた。
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しばらく走ると雲のかかった空に虹が出ている。サバンナには数頭のゾウ。虹をバックにゾウを撮りたいと言ったら、ドライバーは道から少し離れた場所に車を止めた。その時、遠くから走ってくるレンジャーらしき車を発見。近づいてくると、レンジャーらしき人が一人乗っていて、私たちの車に近づいてきた。ドライバーは、虹をバックにゾウを撮っていると説明すると、レンジャーは穏やかに答えてきた。レンジャーがオフロードを厳しく取り締まっているのは、希少動物となっているチーターやヒョウだ。でも、オフロードは後を絶たない現状だ。マサイ・マラのサバンナを空撮した写真を見たことがあるが、車の轍が多いのだ。自然保護と財源とする観光収入のためにドライバーがするオフロード行為。以前より考えさせられた日だった。太陽が薄く雲がかかった地平線に沈もうとする時、遠くに3頭のゾウが見えた。ドライバーは、夕陽とゾウを撮ってから帰ろうと言ってくれたので、太陽が地平線に沈むまでシャッターを押した。そして、薄暗くなった道をロッジへと急いだ。
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ロッジへ戻りレストランで食事をしていると、一人の欧米人が話しかけてきた。中国人かと聞かれ、いや日本人と答えると、ノムラで働いていると言ってきた。どこのノムラ?と聞き返すと、野村證券のロンドン支店で、休暇で家族で遊びに来ているということだった。いまや、アフリカに来るアジア系の旅行者は、中国人だと認識されてしまうのか。経済力の差は、旅行者にも影響していることを実感した。野村證券で働いているイギリス人の子供は、マサイダンスを真似してはしゃいでいた。
次の朝は、ゲームドライブはせず、帰国の為、ナイロビに向かって急いだ。12時前には、ナイロビ近くまで来たが、市内に入ってからは、やはり渋滞に巻き込まれた。早めに帰路についてよかった。空港に着いた時は、チェックインまでには余裕の時間があったので、外のレストランでゆっくりと食事をして帰国の手続きをした。
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