アフリカ音楽の巨人、ジンバブエの歌手 「トーマス・マプフーモ」

Thomas Mapfumo(トーマス・マプフーモ)は南部アフリカ・ジンバブエの歌手。
『ジンバブエのライオン』と呼ばれ、世界的に名を轟かしているアフリカ音楽の巨人の1人です。別名『闘争のアーティスト』、トーマス・マプフーモは1945年にジンバブエの首都ハラレの南東に位置する町マショナランド・イーストのマロンデラで生まれました。幼い頃からショナの人々の伝統音楽に触れ、ショナの伝統音楽のリズム、メロディをロック寄りの楽器演奏で再現するという独自のスタイルを確立しました。
多くの曲の主なメロディは、ショナの伝統楽器ムビラ(親指ピアノ)のフレーズをギターによって再現されています。

マプフーモの音楽は「チムレンガ・ミュージック」とよばれます。チムレンガとはショナ語で「闘争」を意味し、マプフーモの青年時代、当時ジンバブエは英国の植民地で、ローデシアと呼ばれ、白人達による抑圧的な植民地支配が続いていました。
しかし、70年代になると黒人達の反抗は活発化し、彼のチムレンガ・ミュージック(闘争の音楽)は爆発的に流行しました。
マプフーモは音楽によって独立闘争を鼓舞し、「わたしの目の黒いうちは黒人の政権など誕生させない」と公言した当時のイアン・スミス首相をこきおろした曲を発表。当局は彼の歌をラジオ放送から締め出し、独立前夜の1979年、裁判なしに投獄されたりもしています。
1980年にジンバブエは独立を果たし、ムガベ大統領(当時は首相)による政権が誕生しましたが、以来、独裁政権による悪政が続いてしまっています。
マプフーモのチムレンガ(闘争)は、祖国が独立を果たしたとしても静まる事はなく、かつての反人種差別運動の盟友、ムガベ大統領の堕落を歌によって批判し続けた事により、弾圧を受けて、国外追放になってからはアメリカに渡り活動を続けています。
2000年代を超えてもなお、マプフーモの音楽とメッセージは、老成して大人しくなることを知りません。
近年、発表されている曲のタイトルにもそれが表れています。
「Pasi Hariguti(大地の餓えは満たされることなく)」「Kuvarira Mukati(沈黙の苦悩)」「Handimbotya(私は恐れない)」
「Vanofira Chiiko(君は何のために死ぬというのか)?」 などなど。
最後に、1989年に発表されたムガベ大統領(未だに現職!)の事を歌った強烈な一曲「Corruption(腐敗)」を是非。
https://www.youtube.com/watch?v=OyC8isfyBCY
by ナイロビ駐在所・生野