アフリカ絵日記その12 宿場町に黄昏の風が吹く

アフリカ絵日記その12 宿場町に黄昏の風が吹く

アラブとアフリカとビーチリゾートがごちゃ混ぜになった夢の島・ザンジバルを後にして、再びアフリカ本土に戻ってきた。ダルエスサラームから一路西を目指す。やがて、北のモシ方面からくる道との大きな三叉路チャリンゼに出た。町と呼べるほどの町ではないが、交通の要所ということで、ガソリンスタンドを中心に小さなホテルや食品雑貨店が軒を連ねる。大型トラックが路肩に並び、食堂には湯気が立ち込め、非常に活気がある。
これといって、絶景や名所旧跡がある観光地ではない。サファリの拠点でもないし、土産屋もない。トラック野郎にとっての、まさに宿場町といった風情の町。こういう町が僕は好きだ。通りに面した安いホテルに部屋を取る。夜遅くまで車のクラクションや大型トラックのエンジン音、売り子達の声が耐えない。でも、不思議とそれを騒音とは感じない。まるで音楽だ。陽が傾き、あたりは夕闇に染まり、そして夜の帳が下りる。目の前を駆け抜けるトラックのヘッドライトやテールランプが、まるで映画のワンシーンのように哀愁をそそる。ザンジバルで使えた英語は、もうここではほとんど通じなくなる。それでも、何かほっとさせる、とろけるような何かが田舎の町にはある。何もないようで、人間の営みのエネルギーを感じる。それが宿場町の魅力。日本の宿場町も、かつてはこんな雰囲気だったのだろうか。
文・画 吉岡健一