ケニアの珍味「クンビクンビ」

GWも終わり5月のこの時期、日本の皆様は新緑の豊かな気持ち良い春の季節を感じておられる事と思います。
私の居るケニアは現在、大雨期の真っ只中。日本の梅雨のように、毎日しとしと雨が降り続くわけではないのですが、時たま驚くような豪雨に見舞われる事もあります。
農業国ケニアにとって、雨期の雨は「恵みの雨」ですが、ナイロビのように都市生活を送っている身にとっては、大雨が降ると、道路はたちまち川のようになり大渋滞、停電や断水(なぜ?)も頻繁に起こり、生活のライフラインが機能しなくなるので、困りものです。
さて、この大雨期の季節、ケニアでは少し変わった生き物が出現します。その名は「クンビクンビ」。愛嬌のある名前ですが、これは大きな羽根を持ったメスの羽アリです。身体の大きさはおおよそ2~3cm。雨期にのみ出現するアリで、この時期はアリ塚から婚姻飛行でいっせいに飛び立ちます。繁殖のために、メスはその身体にたっぷりと栄養価を含み、実は田舎の方では今でも人々の大切なタンパク源になっています。
その数は凄まじく、毎朝家の玄関の廻りは夥しい数のクンビクンビの残骸で埋め尽くされています。まるで妖精のようにどこからともなくやってきて、きちんと戸締りしたはずなのに、朝になると必ず家の中に十数匹は転がっています。
さて、今年の雨期こそはこいつを料理してやろうと思い、まずは生で一口、以外にジューシーで食べられない事はないのですが、いかんせん見た目は大きめのアリなのであんまり食欲はそそられません。
次に、ごま油で炒めて塩で味付けをしてみたら、何だか桜えびを食べているような感じ。もう1味欲しいので、多めに粗挽きの胡椒を振って、ピリピリ(唐辛子)をまぶしてみるとなかなかいける。オリーブ油にニンニク多めで炒めてみても悪くない。
わさび醤油につけてみる…、これはダメだ。
辛子マヨネーズに七味を振って和えてみる…、これはいけるがもう元が何だかわからない。
雨期の夜長に、大の男が1人で羽アリの料理方法を模索しているのも何だか空しくなってきた。
皆様もこの時期ケニアに来られたら、雨が降った後、外に出てみてください。きっとたくさんの羽アリが空を舞っているのを目にすることが出来るはずです。
しかし、これが大好物という人もいるのだから、まだまだケニアも奥が深いと痛感しています。。

WILD AFRICA 24 マシャトゥのチーターとハイエナ

2月25日の夕暮れ時、私はボツワナのマシャトゥ動物保護区にいた。この日も目一杯撮影を行い残照も消えかけたころ、付近にチーターが出たという一報が入った。急いで現場に駆けつけてみると、3頭の若いチーターがヌーの子供を倒したばかりだった。一頭のチーターがまだのど笛に噛み付いていたところを見ると、ヌーはまだ死んではおらず、到着があと2分早ければハンティングシーンも見られたくらいのタイミングだった。
数分後、ついにヌーは息絶え、3頭は大急ぎで一番手のつけやすい内蔵からむさぼり始めた。チーターがのんびりと獲物を食べないのには、大きな理由がある。サバンナに暮らす大型肉食獣の中で、彼らは最も力が弱く、うかうかするとライオンやハイエナにすぐ獲物を横取りされてしまうのだ。何しろチーターはヒョウのように獲物を安全な木の上に持って上がることもできなければ、他の動物を撃退するライオンほどの力も持ち合わせていない。猛スピードで走れるようになった代償として、彼らは多くのものを失ったのだ。
ほどなくして、目ざといブチハイエナが1頭、薮の向こうから姿を現した。そして全く躊躇することなくチーターたちの所まで駆け寄ったかと思うと、あっという間に獲物を奪い去ってしまった。3頭のチーターは牙をむき出しにして威嚇を繰り返したが、ハイエナに攻撃を加えることはなかった。ブチハイエナは骨をも砕く強力な顎を持っており、噛まれでもしたらひとたまりもないことをチーターたちは知っているのだ。間もなくハイエナは1頭から3頭に増え、見る見るうちにヌーを平らげてしまった。
マシャトゥの素晴らしさは、この連載で以前にも紹介しているが、今回の滞在でも、期待通り動物たちの様々な姿を観察、撮影することができた。通常の国立公園などでは時間的な縛りが厳しく、どんなに面白い場面が目の前で繰り広げられていようと、決められた時間までにキャンプに戻らねばならない。そのために幾度となく悔しい思いをしてきた。ところがマシャトゥでは、何かエキサイティングなことが起きれば、たとえ日没後であったとしてもかなり余裕を持ってその場に留まらせてくれるので、本当にありがたい。この日もロッジに戻ったのは、日没から2時間以上が経過した夜8時過ぎだった。
撮影データ:ニコンD4、AF-S VR 80-400mm f4.5-5.6G、使用焦点距離155mm、1/125秒、f5、ISO6400、露出モード:マニュアル、スピードライトSB910、車載スポットライト使用
写真・文  山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com

African Art 20 アシャンティ族の櫛

黒人アフリカ女性の髪型に対する執着は何千年も前から並々ならぬものであった。紀元前のノックの彫像に見られる珍しい髪型もその好い例である。
カメルーンの仮面にも独特な髪型を持つものが数多く存在する。しかしその髪をまとめる櫛に関しては、ガーナのアシャンティ族の間で作られるものだけが特異な発展を遂げていった。当時を調べた文献によると、17世紀前半から後半頃まではアシャンティの人達の使う櫛は非常にシンプルな指の長さ程の2本の歯を持つ櫛で、それで髪を留めていたという。当時の人々はシラミに悩まされていたため、櫛はシラミを掻き出すのにも使われていた。またその頃の女性は人に会った時、敬意を表すため、頭の後ろに付けている櫛を外して、それを見せて右足を前に出して挨拶をするという習慣があったそうだ。18世紀になると櫛の歯は3-4本に増え、編み込んだ髪に一つ、または二つの櫛を留めていた。20世紀に入ると櫛は大きくなり、実際髪を結うためにはヨーロッパの櫛が使われ、伝統的なデザインを施した櫛は、髪結いが終わった後の髪飾りとして使われるようになった。近年は更に大きくなりこれらは壁の飾りとして使われている。

画像では良く見えないが家のような弧の上には亀と子安貝、銃のデザインが施されている。家族が富に恵まれ、長寿で権力を持てる事を願ったものか?
画像では良く見えないが家のような弧の上には亀と子安貝、銃のデザインが施されている。家族が富に恵まれ、長寿で権力を持てる事を願ったものか?

鳥、“賢者の結び目”を表わしている。後ろを振り向く鳥(サンコファ)はアシャンティ族のことわざで「過去の過ちを正せ」という意味があり、将来の事を決める前に過去を振り返れという教訓。
鳥、“賢者の結び目”を表わしている。後ろを振り向く鳥(サンコファ)はアシャンティ族のことわざで「過去の過ちを正せ」という意味があり、将来の事を決める前に過去を振り返れという教訓。

アシャンティの子宝を願う人形、“アクワバ”をイメージさせる櫛。アクワバと同様、子宝を願う気持ちを込めて夫から妻に送られる。
アシャンティの子宝を願う人形、“アクワバ”をイメージさせる櫛。アクワバと同様、子宝を願う気持ちを込めて夫から妻に送られる。

櫛は女性の持ち物で、彫り師に自分が使用するために注文することもあったが、多くの場合、何かの記念日、例えば結婚式や誕生日、成人式、出産などの時、男性から妻や恋人へ、または父から娘へ、息子から母へと特別な出来事の記念として、また伝統的な祭りやキリスト教の祭りの記念として櫛が送られた。それらの櫛には送り主の名前や記念日の日付や場所などが書き込まれることもあった。このようにアシャンティの人達の間では、櫛は単に髪に飾るためのものだけにとどまらず、大切な記念日や愛情の気持ちを伝える大切な記念品、贈答品であり、デザインも多様化してアシャンティのことわざなども盛り込まれるようになり、アフリカ美術の中でも特異な発展をしていった。
ファンティ族の女性の髪型(19世紀)
ファンティ族の女性の髪型(19世紀)

写真提供/小川 弘さん

小川 弘さん
1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/

Africa Deep!! 53 アフリカ大陸に落下した世界最大の隕石

マニアとまではいかないが、旅先ではよく鉱物や石などを買い集めるほうである。ラピスラズリの目の覚めるようなブルーや紫水晶の放つ怪しい光は、じっと眺めていると「その奥」の世界へ引きずられていきそうになる。化石もしかり。その生物が生きていた時代のことをあれこれと夢想するのは楽しい。
そのうちに手に入れたいと思いながらもいまだ果たせていない石のひとつに隕石がある。旅先の土産物屋で「これは隕石だよ」といわれたことが何度かあったが、信用することができなかった。隕石ならば必ず並外れたオーラを出しているはずだ、という思い込みがあるからだ。実際に日本国内で確認されている隕石の数はわずかに50個程度ということなので、土産物屋でそう簡単に手に入るしろものではないのである。
ナミビアの農場の真ん中に、世界最大の隕石が落ちたままの姿で保存されている。ホバ隕石というのだが、これはさすがにオーラを出しまくっていた。黄色い大地に真っ黒い塊がのめり込んでいる。指でさっとなぞっただけで、その重量感は半端なものではなかった。約3メートル四方に高さが1メートル。それなのに重さは60トン以上あるという。60トン! 大人が千人分の重さだ。それだけ密度が高いということである。
科学者の研究によるといまから約8万年前に落下してきたそうだ。成分の83パーセントが鉄、16パーセントがニッケルで、他にコバルトなどの微量元素もたくさん含まれている。鉄隕石という分類に入る。ホバ隕石の表面にはおそらく研究用に採取されたとみられる削岩跡が何箇所もあるのだが、その断面は日本刀を思わせるような鈍い銀色に光っている。僕はことさらこの断面の怪しい輝きに魅了され、何度も何度も触れてみたのだった。
隕石であるかどうかを判定するためには、放射線と同位体元素の測定が不可欠らしい。その結果、発見された隕石のほとんどは太陽系が出現した当時、45億年前に生成された始原的な物質であるという。だれもが子どもの時分に「宇宙ができたころってどんな様子だったんだろう」と空想した経験があると思うが、隕石はまさにその記憶を秘めているのだ。ああこんなことを書いているとまたナミビアに行きたくなってきた。
写真・文  船尾 修さん

船尾修さん
1960年神戸生まれ。写真家。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、いつのまにか写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。第9回さがみはら写真新人賞受賞。第25回林忠彦賞受賞。第16回さがみはら写真賞受賞。著書に「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から~狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」「世界のともだち⑭南アフリカ共和国」「カミサマホトケサマ」「フィリピン残留日本人」など多数。元大分県立芸術文化短大非常勤講師。大分県杵築市在住。
公式ウェブサイト http://www.funaoosamu.com/

初心者がゼロから始める登山 キリマンジャロへの道 Lesson 11 キリマンジャロ登山直前のトレーニングと準備

弊社では、2012年から3年越しのプロジェクトとして、登山初心者の方がキリマンジャロ登頂にチャレンジする「キリマンジャロへの道―登山・トレッキング講習会」を続けてきました。そして、いよいよ今年の夏~秋に本番のキリマンジャロ登山にチャレンジ!という運びとなりました。「近所の低山」的な山歩き(散歩?)から始めた皆さんもずいぶん逞しくなり、コンディションが整い、高山病を克服できれば、キリマンジャロ・ウフルピーク5,895mに足跡を残すのも夢じゃない、というレベルに近づいてきました。現在は現地も雨期で、一般のキリマンジャロ登山客も減る時期なのですが、夏のベストシーズンに向けて、今回はキリマンジャロ登山直前のトレーニングと準備に関してお話ししようと思います。

◆直前の準備 ① トレーニング編

まずはトレーニング。直前と言っても、山行1カ月から2カ月程度前のトレーニングの話ですが、日常的に登山をされている方にとっては、体力はさほど問題ではないかと思います。最も気になるのはやはり高山病でしょう。日本国内の最高峰富士山や、手軽に登れる4,000m峰のマレーシア・キナバル山を登る際は、低酸素にそれほど強くない方でも高山病にかかるケースは少ないというのが実情です。標高の高い地点に留まる時間が少ないこともありますし、科学的根拠はありませんが、おそらく4,500mあたりに一つの壁があるのかもしれません。ですが、やはり4,000m近い山に登っておくのが高度順応の一助になるのは言うまでもありません。

富士山
富士山

富士山でももちろん効果はあります。ただし、普通に登るのではなく、できるだけ標高の高い場所で長い時間を過ごす(できれば宿泊する)ことが有効とされています。富士山が登れる夏の時期に近い日程でキリマンジャロ登山を予定しているのであれば、本番のチャレンジ前には一度登っておくべきでしょう。同じように形成された火山ですので、斜度や地面の様子も、両山はよく似ています。
キリマンジャロ
キリマンジャロ

「忙しくて…」という方には、お金は余計にかかってしまいますが“低酸素室”でのトレーニングという方法があります。低酸素室を利用する場合でも、できれば長時間(気持ちが悪くならない程度に)滞在し、一晩寝てみるコースなどもおすすめです。最終的には、高山病予防薬のダイアモックスを医療機関で処方してもらい、お持ちになれば充分でしょう。

◆直前の準備 ② 装備編

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キリマンジャロ登山には、雪山やアルパインクライミング(ロッククライミングなど)の技術は不要です。装備は寝袋を除いて日本の夏山、服装は日本の夏山~冬山の準備があれば、これと言って必要なものはありません。寝袋は、高山病予防の観点からも-15℃仕様程度のしっかりしたものが必要になります。忘れがちなのは、アタック時の水筒の氷結予防(テルモスをお持ちになれば全く問題ありません)や、寒気で消耗が早くなるバッテリーの予備。それに、現地の食事が口に合わなかった場合の補助食や行動食、ホコリやのどの乾燥対策として飴玉やスカーフ(マスクをお持ちになる方もいらっしゃいます)の準備もしていた方がいいでしょう。
アフリカ最高峰の頂も、しっかりと準備をし、体調を整えて望めば決して夢ではありません。今年のベストシーズン(7~9月)も、多くの方々が安全に、楽しくアフリカで最も高い場所に立たれることを祈っております。
羽鳥