アフリカの女性はおしゃれだと思う。
特にヘアースタイル。アフリカを旅したことのある人なら、実に多種多様な彼女たちのヘアースタイルに感心したことがあるに違いない。
そのこだわりと、手入れの時間のかけ方が半端ではない。木陰や家の前などで女性が数人集まっているところをのぞくと、たいてい髪型を整えている最中だ。日本のように定規型の歯が細くて短い櫛ではなく、どちらかというと縦型で歯がすごく長くて隙間があいているタイプのものが使われる。
地毛はものすごい巻き毛だから、日本で使われる櫛では髪はふつうに梳けない。だからたいていはふたりが一組になり、ひとりが後ろにまわって蜂の巣のような髪に櫛を差し込むようにして梳くのである。梳いた髪はそのままの形でぴんと立ったままだ。だから梳いている最中は、彼女たちの頭は超バクハツといった形のまま固まっている。この中途半端な髪型のときに話しかけたりカメラを向けたりすると、あまり見られたくないようで、「きゃー、いやぁー」と笑いながら身をよじって拒絶されることが多い。
このあとヘアースタイルの選択肢はふたつある。いわゆるエクステンションを地毛に絡ませて編みこんでいくか、あるいは直毛パーマをかけるかである。エクステンションは市場に行けばそれこそさまざまな色や種類のものが売られている。アフリカ女性の髪は非常に癖が強いため、ピンやゴムを使わなくても編みこむだけでしっかりと止まる。
直毛パーマは日本と同じでカーラーを巻きつけていく。アフリカ人女性はほぼ百パーセントが巻き毛なため、直毛に対して僕たちが思っている以上に強い憧れをもっている。ないものねだりをするのが人間の常なのである。だから美しい黒髪の日本人女性は彼女たちにとっては羨望の的なのだ。日本人の女性ならストレートな髪型でアフリカに行ったほうが絶対に受けが良いと思う。同時に、アフリカに行ったら髪の毛を触られまくるのを覚悟しておいたほうがよい。
現地では、おしゃれは何も大人だけの専売特許ではなく、子どもたちも母親や姉に編んでもらうことはふつうだ。凝った髪型をしている小さな女の子はちょっと得意げである。意外に多いのが、カツラ。こちらは短髪の人がよく利用する。カツラを外すとまるで別人のような顔になるため、僕はよく人違いをして恥ずかしい思いをしたものだった。
写真・文 船尾 修さん
船尾修さん 1960年神戸生まれ。写真家。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、いつのまにか写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。第9回さがみはら写真新人賞受賞。第25回林忠彦賞受賞。第16回さがみはら写真賞受賞。著書に「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から~狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」「世界のともだち⑭南アフリカ共和国」「カミサマホトケサマ」「フィリピン残留日本人」など多数。元大分県立芸術文化短大非常勤講師。大分県杵築市在住。 公式ウェブサイト http://www.funaoosamu.com/