2月上旬に添乗業務でモロッコへ行って来ました。
モロッコはアフリカ大陸の西の端に位置する、マグレブ(アラビア語で「日沈む場所」)諸国の一つです。アフリカ大陸にある国というイメージから、一年中暖かいと考えがちですが、最大の都市カサブランカは緯度的に福岡県と変わりません。アトラス山脈には標高4100mを超える高山もあり、時期によっては雪が降ることもあります。
今回のツアーでも、世界遺産の古都フェズからアルジェリア国境近くの砂漠の町メルズーガまでの移動中越えた中アトラス山中で雪に降られました。午前中は雪、午後は非常に乾燥した砂漠地帯、夕方には砂丘の目の前に、とめまぐるしく変化していく景色を、この時期だからこそ楽しめました。
サハラ沙漠への入門編としても、北アフリカのイスラム文化への入り口としても、非常に魅力的な国。そして、女性向けにはスーク(市場)にハイセンスな雑貨がズラッと並んで待っています。
まだ、「日沈む国」未訪問の方、今年は旅先の一つとしてお考えいただいてはいかがでしょうか?
モロッコのツアー一覧はこちら。
WILD AFRICA 19 カラハリでチーターの全速ダッシュを撮る
広大な平原にガゼルたちが散らばり草を食む、一見のどかなカラハリの風景。しかし、実は草むらの奥には狩りのチャンスをうかがうチーターが潜んでいる。突如、チーターはそのスレンダーでしなやかな体を爆発させるかのように飛び出し、ガゼルに襲いかかる。一瞬にして平穏はパニックへと変わり、自分が標的であることに気付いたガゼルは右に左にと舵を切りながら、何とかこの地上最速のハンターを振り切ろうとする。チーターも負けじと長い尾を振り回しながらバランスを取り、獲物に食らいついて行く。
2012年8月24日、13時56分の出来事だ。チーターのハンティングを写真に収めたかった私は、3日間一頭のメスを追い続け、ようやく全力疾走する姿を撮影するに至った。チーターに限ったことではないが、肉食獣の狩りを撮るのはとても地道な作業である上に、多くの条件が一度に満たされないと成功しない。
当然ながら、まずは被写体を探し出すところからプロセスは始まる。ゲームドライブに出たら、周囲に目を光らせ、双眼鏡で薮の中や木陰を覗き、路上に残されている足跡に注視し、すれ違った人々と情報交換を行う。いざチーターが見付かったら、後はひたすら張り付いて待つ。ちょっと目を離した隙にチーターが獲物を見付けてしまい、気付いた時には狩りが終わっていたなんて可能性もあるので、集中力をいかに保つかが大きな課題となる。
また、仮に準備万端だったとしても、都合良くこちらに向かって獲物を追いかけてくれるとは限らないし、猛スピードで走る相手をファインダーの中に捕らえ続け、ピントを合わせながら、そこそこアップで撮影するのは決して楽ではない。過去、自らの技量の無さによって決定的なチャンスを幾度も逃してきた身としては、相手がスプリントに入る瞬間は毎回猛烈に緊張する。
今回、追跡3日目にしてやっと条件が揃い、疾走するところまでは撮影できたチーターだったが、実はこの時彼女は獲物を捕らえることができなかった。時速100km以上で走れても、持久力のないチーターの狩りが成功する確率は50%程度なのだ。本当ならあと数日粘りたかったのだが、残念ながらこちらの時間がなくなってしまったので、続きは次回と言ったところだ。
撮影データ:ニコンD4、AF-S 500mm f4、1/3200 f8 ISO1600
南アフリカ、カラハリ・トランスフロンティア・パークにて
写真・文 山形 豪さん
やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com
African Art 15 エコイ頭上仮面
ナイジェリア南東部とカメルーンにまたがるクロスリバー地域にはいくつかの土着信仰を持つ民族が住んでいる。今回取り上げるエコイ族はその中でもレオパードを意味する“Ngbe”と呼ばれる結社を持ち、古くから力を持った部族である。この部族の頭上仮面はアフリカの仮面の中でも特に呪術的な力を感じさせる。

アフリカの仮面の中で、その本体に動物の皮を張ったものは非常に稀である。私が現地を訪ねた折りエコイ仮面の由来を聞いた時の話だが、それによると、皮を張った仮面を作るようになったのは、昔に行われていた生首を頭上に載せた舞踏儀礼が、20世紀初頭、英国の植民地時代に野蛮だということで禁止になり、それに代わるものとして木製の本体にカモシカの皮を張り、木の葉や皮の樹液で皮膚の色に似せて本物に近い形を作ったのが始まりだという。昔は、他部族との戦闘に勝利すると、祝宴の舞踏の際、敵の首領の首を切り取り頭上に載せて、そのパワーを自分たちの中に取り入れようとする儀礼が行われていた。また、何年か毎に取り行われる大きな祭礼や儀礼の時には、生贄として奴隷などを祖先の祠に捧げ、その生首を頭上に載せて踊ったともいわれている。


エコイの仮面には2つのタイプがある。一つはヘルメット状になっていて頭からすっぽりと肩までかぶるタイプと、もう一つは首まで立体の造形を作り、その下に籐などで作られた籠状のものを付けて頭の上に載せるタイプである。ヘルメット状の仮面には1つの顔、2つの顔、3つの顔を持つ仮面がある。2つの顔、3つの顔の仮面には世の全てを見渡せるという意味合いが込められている。またエコイ族には男と女の秘密結社があり、それぞれ男の仮面、女の仮面が存在する。女の仮面は女の子が結婚する前の儀礼などに使われ、男の仮面は葬式、裁判の決裁役、不正人の監視役、農耕祭など社会的な役割を担う儀礼に使われる。仮面は、生と死の橋渡し役、祖先との伝達役として超人的な力を持つ存在でなくてはならず、威嚇し、全ての人が怖がり、絶対に立ち向かえない力を持つ存在であった。


今回、写真で紹介する仮面の一つは、女結社の仮面で髪の毛を角のように表現したユニークな頭上仮面である。これはエコイ社会において髪を非常に重視していることの証である。この頭上仮面は技術的に卓越した作り手による美しい女性の顔で、静かな表情は何かを語りかけるようだ。これは、エコイ仮面の神秘性と造形力を兼ね備える傑作の一つであり、全てのアフリカ仮面が内蔵している力を最もストレートに表している仮面でもある。
写真提供/小川 弘さん
小川 弘さん 1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/
2012.12.27発 ナチュラリスト加藤直邦さんと行くケニア 10日間
ジャンボー!サファリガイドの仕事に復活した加藤直邦です。
12月27日から1月5日までの年末年始を利用したケニア・キャンプサファリツアーに出かけてきましたので、そのレポートをいたします。
今回のお客様は、アフリカ旅行初めて方から、道祖神で何度も旅行しているリピーターさんまで幅広い層の方々が参加してくれました。
なかでも参加していただいた林弘道さんは、道祖神のサファリには欠かせなくなっている「動植物チェックリスト」の写真や情報を提供しているサファリのベテラン。今回は僕とのダブル・ガイドのような状況で、参加者の皆さんにとってはラッキーな境遇だったと思います。
最初に訪れたのはカカメガフォレスト国立保護区です。ここはウガンダに近いケニア西部に位置し、ケニア最大にして最後の熱帯雨林と呼ばれる貴重な地域になっています。そして私は去年まで青年海外協力隊として、ここで2年間ほど環境教育活動をしていたので、お客さんを一番案内したいところでした。
予定外だったのはナイロビからカカメガまでの移動時間で、早朝ナイロビを出発したのに保護区のキャンプサイトに着いたときは日が暮れていました。雨の中、ヘッドランプをつけてのテント設営に初日からちょっとハードな一日になってしまいました。
翌日からは、たっぷり水分を含んだ熱帯雨林の中を歩いて観察。
原生林に点在する巨木を巡りながら、頭上を飛び跳ねるサルや、恥ずかしがり屋の野鳥たちを観察しました。次の朝は早起きして丘を登り、森の向こうから顔を出す日の出を眺めました。強い日差しが森の樹木に当たると、水蒸気がモクモクと湧き上がり、私たちは雲海の上に立ったような気持ちいい光景を眺めました。森の新鮮な空気と、この壮大な景色を日本からのお客様に見せることができて、本当に良かったです。

次は南へ移動。私が5年間住んでいたマサイマラ国立保護区へ出発です。
道中では、ささやかに建てられている赤道直下の看板で記念写真を取ったり、道端で焼いているトウモロコシを食べたり、紅茶の産地であるケリチョーで「茶摘み」を眺めながらお弁当を食べたりしました。
そしてマサイマラへ入ると、すごい大雨で草原が湖のようになっていました。例年だと雨の少ない時期なのですが、ケニアも世界的な異常気象の影響を受けているようです。草原でのテント設営が心配でしたが、幸いステイ先のキャンプ場は大丈夫でした。ここはなだらかな丘の上に位置していて、水捌けが良いようです。

夜になると雨が降りますが、日中は気持ちの良いサファリ日和です。
3日間おこなったサファリドライブでは、大きな岩の上で休んでいるライオンファミリーや、一時間ねばって観察したチーターのハンティング。それに、日中堂々と草原を移動しているヒョウの親子を観察することができました。林さんの動物観察記録によると、今回のサファリツアー中に哺乳類は32種、鳥は約141種を観察できたとのこと。私たちが幸運だったこともありますが、マサイマラの生物多様性の高さに改めて感動しました。

さらに印象的だったのが、マサイ族と一緒に散策するネイチャーウォークです。
雨が効を奏して保護区の外にあるキャンプ場周辺は、草食動物の好む緑の草原となり、保護区以上にキリンやシマウマの群れが徘徊していました。自分の足で歩くと動物たちとの目線が一緒なので新鮮です。ヌーたちは出産シーズンが始まろうとしていて、数頭の赤ちゃんも観察することができました。それにシマウマの糞を懸命に転がしているフンコロガシの姿に笑みがこぼれます。これだけ草食動物が集まってきたら肉食動物もやってくるのではないかと思っていたら案の定、翌朝のサファリドライブでライオン親子をキャンプ場のすぐ側で発見しました。

今回のツアーでは、陸路で森深い熱帯雨林と、草原の広がるサバンナを訪れました。このように環境の異なる自然を同時に満喫できるケニアは、やっぱり何度訪問しても飽きない魅力的な国ですね。
加藤直邦
Africa Deep!! 48 やっぱり地鶏がウマイ!アフリカのニワトリ事情
つい先日、近所でできたばかりの「道の駅」へ立ち寄ると、日本ではめったに目にしないものが売られていた。それは何かというと、ニワトリの足である。甘辛く炊いたものが6本ほど束になって売られていた。さすがは大分県である。
大分県は何を隠そうひとりあたりのニワトリ消費量が全国一。レストランの定食に「トリ天セット」は欠かせないし、県内どこへ行っても唐揚げの店が繁盛している。ちなみにこの唐揚げ屋さんはテイクアウト専門で、量り売りである。売り方も、骨付き、骨なし、手羽先、モモ肉、砂肝……と、多岐にわたる。店によっては何十年も守り抜いている秘伝のタレを使ったりとそのこだわりは半端ではない。大分では、誕生会だ、飲み会だ、ナントカ記念日だというときに、あるいは他人の家にお邪魔するときに、揚げたてのアツアツ唐揚げは必須アイテムで、指でつまんでハフハフしながら食べると、見知らぬ人ともすぐに打ち解けてしまう。
話がちょっとそれてしまったが、アフリカの人たちも結構、鶏肉を食べるのではないかと思う。市場の肉売り場にはすでに羽をむしられたニワトリが並んでいることもあるが、たいていは生きたまま篭に入れられたり、足をひもで縛られて逃げられないようにして売られている。買う人は、足を持って重さを量ったり、肉付きを調べたりしながら、結構真剣な面持ちで値切っている。都市部ではブロイラーの肉も出まわっているが、平飼いや放し飼いが普通なアフリカでは、いわゆる地鶏の味と歯ごたえを楽しむことができる。
ウガンダに聳えるアフリカ第3の高峰ルウェンゾリを登りに行ったとき、麓にあるカセセの街でいろいろ食料品を揃えていたら、少年たちがニワトリを抱えて売りに来た。きっと僕たちの入山準備のことを聞きつけたのだろう。これは保存がきく携帯食になるなと思って購入したのだが、いざ山へ入るとガイドがその日のうちに調理してしまうという。理由をたずねると、「ニワトリを狙って雪豹が出たら怖いでしょ」とのこと。ごもっともです。
写真・文 船尾 修さん
船尾修さん 1960年神戸生まれ。写真家。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、いつのまにか写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。第9回さがみはら写真新人賞受賞。第25回林忠彦賞受賞。第16回さがみはら写真賞受賞。著書に「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から~狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」「世界のともだち⑭南アフリカ共和国」「カミサマホトケサマ」「フィリピン残留日本人」など多数。元大分県立芸術文化短大非常勤講師。大分県杵築市在住。 公式ウェブサイト http://www.funaoosamu.com/