WILD AFRICA 20 エトシャ国立公園のディクディク

ナミビアのエトシャ国立公園はアフリカ屈指の野生動物の宝庫であり、同国においては、大砂丘群で知られるナミブ砂漠のソススフレイと人気を二分する観光の目玉となっている。当然ながら、エトシャを訪れる人々の大半は大型野生動物、特にゾウ、サイ、ライオンやチーターといったサファリの定番とも言うべき動物たちを目当てにやってくる。
しかし、多彩な動物相を誇るエトシャには、小型の動物も多数生息しており、被写体としても面白い種が多い。例えばダマラディクディクは、目と耳が非常に大きく、鼻先をくねくねと曲げられる、とても美しい小型レイヨウだ。オスにのみ尖った短い角がある。薮の濃い場所を好み、つがいで小さな縄張りを守りながら暮らしている。一度ペアになると相手が死ぬまで共に過ごすことでも知られている。
車でゆっくり接近すればあまり逃げないので、見付けさえすれば撮影は容易だ。公園内で最も遭遇率が高いのは、ナムトーニ・キャンプ(東端にあるキャンプ)のすぐそばにある、ディクディク・ドライブと名付けられたループ状の道だ。その名の通りディクディクの数が非常に多く、近年このエリアで行われた調査では、1平方キロ当たり90頭のディクディクが記録されている。
この写真もディクディク・ドライブで撮影したものだ。オスがメスの尿の臭いをかいでフレーメン反応(ネコ科動物やウマ、レイヨウなどが特定の臭いに反応して唇を上げる生理現象)を見せているところで、雨の直後だったため、二頭ともまだ毛が濡れている。
ディクディクの仲間は4種類確認されており、そのいずれも東アフリカのタンザニアからケニア、エチオピア、ソマリアにかけての乾燥したサバンナに分布している。ところが、ナミビア中部からアンゴラ南西部にかけてのサバンナにも、飛び地のようにディクディクが1種類のみ生息している。このことから、大昔には大陸東部と南西部とを繋ぐ乾燥サバンナの「回廊」が存在したと考えられている。
撮影データ:ニコンD300、AF-S VR70-200mm f2.8、1/160 f6.3 ISO800
ダマラディクディク
英名:Damara Dik-dik (Kirk’s Dik-dik)
学名:Madoqua kirkii
体高:♂38.6cm ♀39.4cm
体重:♂5.1kg ♀5.6kg
写真・文  山形 豪さん

やまがた ごう 1974年、群馬県生まれ。幼少期から中学にかけて、グアテマラやブルキナファソ、トーゴなどで過ごす。高校卒業後、タンザニアで2年半を過ごし、野生動物写真を撮り始める。英イーストアングリア大学開発学部卒業後、帰国しフリーの写真家に。南部アフリカを頻繁に訪れ、大自然の姿を写真に収め続けている。www.goyamagata.com

African Art 16 パリのケ・ブランリー美術館

私がパリに行く度に時間を見つけて必ず立ち寄るところはケ・ブランリー美術館である。これは2006年6月に元々シャイヨー宮にあった人類学博物館とポルト・ドレ宮にあったアフリカ・オセアニア博物館が当時のシラク大統領によって統合された新しい形の美術館で、多岐にわたる民族学的資料と収蔵品とが美術と人類学的視点からまとめられている。
ケ・ブランリー美術館の最初のエントランスで出迎えてくれるのは、アフリカ、マリのドゴン族の前身テレーム人が10~11世紀に制作したものといわれるジェネンケ様式の両性具有の特大の立像である。とても硬い木を用いて作られたこの彫像は力強い造形力と神秘的な表情を持ち、アフリカ美術を代表する傑作のひとつである。形態的にはドゴン族がその地に住み始める前のテレーム人の時代的特徴が顕著で、両手を上に高く挙げた形は創世神話と結び付いたものといわれる。この像は古くからサハラの台地で信じられてきた両性具有崇拝思想を表現していて、神は男女両性を創造し、その2つの性が協力した時に物事は成就するという意味を持っている。12世紀頃、イスラム化が進むにつれてドゴン族はその感化を嫌い、現在住んでいる険しい岩盤の山岳地帯に逃れていった。生活の中心に土着信仰があったその当時に想いを馳せて、この大きな立像を眺めて見ると彫像はなお一層気高い。

ドゴン族(マリ)両性具有の立像 10~11世紀 210×37×22cm この立像はHelen&Philippe Leloupさんの協力とAXA財団の援助によりフランス政府が取得したものである。 (Musee du Quai Branly)
ドゴン族(マリ)両性具有の立像 10~11世紀 210×37×22cm
この立像はHelen&Philippe Leloupさんの協力とAXA財団の援助によりフランス政府が取得したものである。 (Musee du Quai Branly)

さて、美術館の観賞順路から行くと、次にはアジア・オセアニアの展示があり、その後、広いスペースをとってアフリカの展示が続く。展示されている作品の質はまさにアフリカ美術の粋を集めたものと言っても過言ではない。私の非常に好きな作品のひとつに黄金の都ジェンネから発掘されたテラコッタ像がある。13世紀から15世紀のものと推定されているが、これらのテラコッタは1970年代後半から1980年代半ばにマリ政府が輸出禁止にするまでは市場にたくさん出ていて、私自身もよく目にしたものである。ジェンネの人物像の多くは座っているか、立膝をついているかのポーズで、苦悶の表情を浮かべ、病人や異形の者、あるいは体に蛇を巻きつけたものなどが特徴である。どのような目的で作られたのかは定かではないが、病者の占いの儀礼に使ったり、祠に儀礼用の壺などと一緒に厄除けとして置かれたり、骨壷とともに埋葬されたのではないかと考えられている。残された造形品から見てジェンネ王国では高度な文化が繁栄していたに違いない。この美術館は質、量ともにアフリカ美術の超一級の収蔵品を持つ、訪ねる価値の非常に高い大変ユニークな場所である。
ジェンネ地方(マリ)女のテラコッタ像 13~15世紀 37.5×31×24cm
ジェンネ地方(マリ)女のテラコッタ像 13~15世紀 37.5×31×24cm

ヤウレ族(コートジボワール)の仮面40cm
ヤウレ族(コートジボワール)の仮面40cm

ドゴン族の仮面群
ドゴン族の仮面群

写真提供/小川 弘さん

小川 弘さん
1977年、(株)東京かんかん設立。アフリカの美術品を中心に、アフリカ・インド・東南アジアの雑貨、テキスタイルなどを取り扱っている。著書にアフリカ美術の専門書「アフリカのかたち」。公式ウェブサイト http://www.kankan.co.jp/

Africa Deep!! 49 子どもの遊びというのはやはり世界共通だね

先日、ほぼ十年ぶりに南アフリカ共和国のタウンシップに滞在する機会があった。タウンシップというのは黒人居住区の意味で、アパルトヘイトという人種による隔離政策が存在していた時代の置き土産のようなものだ。
当時は、黒人は都市で労働することはできても、滞在することが許されていなかった。いってみればタウンシップは、都市の産業を支える労働力をプールする場所、住宅地として開設された。だからここには黒人と一部のカラード(インド系やマレー系、混血など)しか居住していない。現在は、アパルトヘイトは撤廃されているから居住は自由だが、しかしタウンシップには白人はまったくといってよいほど住んでいない。アパルトヘイトが撤廃されて20年たつが、現実には人種は交わらないで暮らしている。
いま南アフリカは新興経済発展国としてアフリカ経済をリードする存在だ。それはタウンシップのようすにも反映されていた。モールと呼ばれるショッピングビルがあちこちにできている。また自家用車を持つ人たちも増えた。治安が悪いという理由もあるのだが、家に立派な門と塀が取り付けられていた。2010年に開かれたサッカーのワールドカップも経済効果の後押しをしたのだろう。
しかしそれでも変わらないのは、子どもたちの姿。夕方、タウンシップを散歩すると、どこからともなく、わらわらと子どもが湧いて出てくる。男の子の遊びで多いのは、断然サッカー。女の子の場合は、縄跳び、お人形遊びなど。感心するのは、幼児から小学校高学年ぐらいの年頃の子どもたちが、ときには男女入り混じって仲良く遊んでいる姿である。いまどきの日本の子は同学年同士でしか遊ばない。妹や弟をおんぶしている子もいる。
お、懐かしい「ケンケンパー」をやっている。僕が子どもの時分は「かかし」とも呼んだのだが、石を投げてケンケンパーをしながら拾うというゲーム。男女の区別はあまりないようだった。「ホップスコッチ」とこちらでは呼ぶのだそうだ。日本の「かかし」と比べて「頭と笠」の部分がないのはおもしろい。でも、子どもの発想って、世界共通なんだな。
写真・文  船尾 修さん

船尾修さん
1960年神戸生まれ。写真家。1984年に初めてアフリカを訪れて以来、多様な民族や文化に魅せられ放浪旅行を繰り返し、いつのまにか写真家となる。[地球と人間の関係性]をテーマに作品を発表し続けている。第9回さがみはら写真新人賞受賞。第25回林忠彦賞受賞。第16回さがみはら写真賞受賞。著書に「アフリカ 豊穣と混沌の大陸」「循環と共存の森から~狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵」「世界のともだち⑭南アフリカ共和国」「カミサマホトケサマ」「フィリピン残留日本人」など多数。元大分県立芸術文化短大非常勤講師。大分県杵築市在住。
公式ウェブサイト http://www.funaoosamu.com/

NAIROBI FASHION SHOW!!!!

先日、ナイロビでファッションショーが行われたので、見物に行ってきました。皆さん、おきれいデスネ!(たまに明らかに変なのもいますが…)
ナイロビは今日も平和です。
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初心者がゼロから始める登山 キリマンジャロへの道 Lesson 7 登山中に触れる自然

登山の楽しみにも色々ありますが、登山愛好者のどなたに聞いても、登山中、あるいは頂上から見える景色を第一に挙げるのではないでしょうか?反面、頂上を踏むことだけが目的の登山は「ピークハント」と言いますが、“ピークハントだけ”を目的に登山をされる方は、実際はかなり少ないのではないかと思います。現在、日本の登山愛好家の間では、「百名山登山」が大きなブームになっています。故深田久弥さんが選んだ100の名峰・名山を『日本百名山』と呼び、その全山登頂を目指すというもの。とは言っても、日本の山岳地形の関係で、富士山などいくつかの独立峰を除き、一つの百名山を登る上で、ニ百名山、あるいはその他の百名山にもれた山も同時に登らざるをえない、あるいは登った方が面白いコースになる場合が多々あります。
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山頂や開けた場所からの展望を楽しむため、また安全性を考慮すると当然ですが、好天のもとでの登山を好まれる登山者が圧倒的に多いと思います。また、雷や強風を伴った激しい雨天でない限り、柔らかな雨の降る中、遠くの景観ではなく近くの景色、雨に煙った原生林や、濡れて輝きを増した木々、生き生きとした高山の花々などを見るのが楽しみな登山者も少なからずいるでしょう。山の景色・自然の楽しみ方は、ほんとうに様々で、目的地(山頂)だけではなく、その“過程”に大きな楽しみがあるという意味では、旅と似ていますし、徒歩での山旅は旅の原点、と言えるのかもしれません。
地域にもよりますが、日本の山地は基本的に、麓は照葉樹林帯で、標高が高くなるに従って、夏緑樹林帯、針葉樹林帯、低木林帯と変化していき、標高2,500mを超える山々の稜線や山頂部の多くは植生に乏しく、岩稜や岩盤に覆われています。これを植生の『垂直分布』といいますが、猛禽類やライチョウなど鳥類や、クマ、カモシカ、オコジョなど哺乳類もこの分布にならっています。南北に長い国土を持つ日本では、この垂直分布とともに、地域によって違いが大きい『水平分布』が複雑に絡み合い、豊かな自然を形成しています。中には、海抜ゼロメートルから2,000mまでをカバーし、北海道から沖縄までの気候植生が垂直に配置された、屋久島のような貴重な自然を持つ島もあります。

ライチョウ
ライチョウ

キリマンジャロの植生もこの垂直分布が特徴的で、標高が高い分、日本よりさらに広い気候帯をカバーし、幅広い植生を楽しむことができます。キリマンジャロは標高の低いエリアから、亜熱帯雲霧林帯、低灌木帯、高地砂漠帯、氷冠と4つの気候帯に分けられ、植生もそれに応じたもの、加えて人の暮らしに近い裾野ではコーヒー畑などの耕作地が広がっています。流れだした溶岩によって形成されたことを物語る、ゆったりとした起伏の斜面に広がる低灌木、かつて氷河が削りとった谷間に咲いているキク科の高山植物など、見どころは尽きません。アフリカ最高峰の頂上ばかりでなく、ルート脇の自然も楽しみつつ、登山を楽しんでいただければと思います。
キリマンジャロとセネシオ
キリマンジャロとセネシオ

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羽鳥